先日、父が自殺未遂をしたのですが、心身共に回復してきました!
これは、親族間で発生した問題を地域につなぐことで、家族で抱え込まずに快方に向かうことができたお話です。
結構がんばりました!!
登場人物
父:穏和。定年退職をして無職。後天性の視覚障害を持っており、白状があれば独歩は可能だが日常生活に支障多々あり。趣味は読書とランニングだったが、今はできなくなった。
母:しっかり者。福祉職で在職中。言葉がナイフのように鋭利なため無意識に他人のハートを刺している。
僕:実家の埼玉を離れ東京にいる。主にPCを使う仕事。
姉:僕の姉。結婚をして実家を出ている。
あらすじ
月曜日、池袋駅の職場でいつものように働いていました。
どこでもできる仕事ではありますが、職場の方が集中できるのでわざわざ出社しています。
昼休みになり、お弁当を買いに出かけたときのことです。
スマホを見ると姉から着信が入っていたので、珍しいと思いながら折り返しました。
もしもし~と通話に出た姉は、不安そうな声で話します。
「実家に電話をしたんだけど、父の様子がおかしい気がするんだよね。呂律が回っていない。」
呂律が回っていないなら、僕から父に電話をしてもわからないのかな?
よくわからないので母に電話をして確認をしてみます。
「言いづらくて報告していなかったけど、家族写真を片手に睡眠薬をオーバードーズしました。救急車で搬送されて点滴を受けて、今は自宅で療養しています。」
平日の頭から重たい話でびっくりしました。オーバードーズってどのくらい飲んだのだろう。
「救急隊員さんが見たら100錠分くらいの空ごみがあった」
森永のラムネボトルは42粒入りです。
めちゃくちゃ飲んだじゃんと思いました。
産後で実家に行けない姉に代わって、僕は在宅ワークの許可を職場からもらい、着の身着のまま埼玉の実家に帰ることにしました。
父の動機
家に帰ると、父は薬中みたいになっていました。(視線がどこ向いているかわからない。歩行がおぼつかない。呂律が回らない)
それでも、体調は回復傾向にあるようです。(本人談)
父に話を聞いた結果、だいたいこんな感じでした。
・後天的に目が見えなくなり、できることが少なくなってしまった。
・定年退職をしたが、もっと仕事がしたかった。
・眠れない日々が続いて、内科で睡眠薬を処方してもらっていた。
・妻とちょっとしたことで口論になってしまった。
僕の目から見た感じ、できることが少なくなって生きがいのようなものがなくなったのだろう。
そして、話相手も母しかおらず、その母と喧嘩してしまって逃げ場がなくなったのだろうと思いました。
ていうか、実家に帰って数時間、ずっと話しかけてきて寂しかったんだなと思いました!めっちゃしゃべる!
僕も、いつも実家に居られるわけではないので、地域の中に話相手になってくれる人がいた方がいいなと思いました。
やったこと
ミッションは大きく3つだと思いました。
①父を地域につなぐ
②父をサービスにつなぐ
③母の話も聞く
ミッション①父を地域につなぐ
まずは地域包括支援センター※に電話をしました。
※地域包括支援センターは、各市区町村に設置されている高齢者福祉の相談施設。近年では高齢者福祉に限らず福祉全般の相談窓口となっていることもあります。
「障害者福祉は社会福祉協議会※が担っているので、そちらに相談していただきたいのですが。」
これが”縦割り”というやつですか。行政関係は担当が分けられているため、せっかく相談しても別の窓口に回されてしまうことがよくあります。
※社会福祉協議会は、各市区町村に設置されている地域福祉を推進するための団体。
「もしよろしければ、私から社会福祉協議会に伝えておきましょうか。」
やさしいご担当者でした。すみません。せっかちな性格なので、社会福祉協議会からの折り返しの連絡を待つのがいやなので、自身で電話をしました。事の顛末を話します。
「わかりました。お父様がお住いの地区に詳しい職員がおりますので、一度お打ち合わせはいかがでしょうか。」
翌日、近くの公共施設で社会福祉協議会の職員さんと面会をすることになりました。
「こんにちは、職員の関野(仮名)です。よろしくお願いします。」
関野さんの名刺には生活支援コーディネーター※と記載がありました。
※生活支援コーディネーターは、地域の社会資源(住民活動)などを把握して、それを福祉とつなげることで高齢者の介護予防等に尽力する人。
「改めて、お父様のことについてお聞きしてよいでしょうか。」
父の現状や、生きがい・話相手を欲しそうにしていること、以前の趣味について話しました。
その結果、関野さんからは父が参加可能そうなものとして以下のような地域活動があることを教えていただきました。
A 視覚障害当事者とガイドヘルプボランティアが合同で活動する会
B ラジオ体操後に一軒家に集まり談笑する会
C ビブリオバトル(図書をプレゼンし、より多くの人に読ませたいと思わせることを競う競技)
Aは、定期的な集まりのほかにも、地域の小学校に赴き視覚障害がどういうものかを伝える”福祉教育”もしているようで、父のやりがいになりそうだなと思いました。
また、視覚障害を持ちながらスマホやPCを使いこなす”パワーユーザー”の方もいるということで、父の刺激にもなると思いました。
活動は月に一度のようですが、当日は社会福祉協議会が送迎もしてくれるので、私や母の手もかからずに活動に参加することができます。
B・Cは、Aを通じて社会参加を楽しいと思ってからでもよいだろうと感じました。
そこで、父にAのことを伝えました。
伝え方は重要だと思って、福祉教育などのやりがいになりそうな活動、ガイドヘルプやパワーユーザーとつながれるメリットを中心に伝えました。
その結果、父も「何もしないよりはいいか」と前向きな発言をしてくれました。
関野さんに連絡をして参加意向を伝え、父と関野さんの面会を行いました。
6月の活動は郷土資料館で学芸員の話を聞きに行くのだそうです。
以前に旅行に行ったことがあることもうかがいました。
「いつか俺も旅行に行きたいな~」
と楽しみにしていました。
ミッション②父をサービスにつなぐ
父には、母以外の話相手が必要だと感じました。
そこで、2つのサービスを使用することにしました。
1つ目は、接骨院です。
僕も姿勢矯正で通ったことがあるのでわかりますが、施術中の30分程度は先生と雑談することができます。
父の姿勢が悪いこともあり、「肩こりを治そう」という名目で接骨院に連行しました。
先生は優しい方で、施術中に父の話を優しく聞いてくれています。
「週3で通うか~。」
と言っていました。
2つ目は、”同行援護”という障害福祉サービスです。
視覚障害がある人のためのサービスで、従業者が目的地まで一緒に歩いて同行してくれます。
これを利用することで、道中は父の話相手になってもらえるとともに、行動範囲も拡がります。
そこで、市役所の福祉課を訪問してサービスの利用申請を行いました。
「今度、駅の向こうの美容室に連れて行ってもらおう」
と、以前通っていた美容室に行けるのを楽しみにしていました。
ミッション③母の話も聞く
これは、実家に帰ったその夜にしました。(飲んだだけです。)
「私が仕事を辞めて、ずっとそばに居たほうが良いかしら」
と母もそこそこ気を病んでいたのですが、二人でずっと居ても解決はしないだろうなと思いました。
そこで、まずは地域に父の居場所をつくることを提案し、①・②を進めていきました。
終わりに
ミッション①~③を終えて、わが家の危機はいったん去りました。
母も姉も、今回の問題に対して「私がもっと頑張ってなんとかしなきゃ」みたいに考えていました。
でも、あんまりがんばりすぎても疲れちゃうと思うので、地域を頼らせてもらいました。
自分の力でどうにもならないとき、地域でもなんでも頼れるのはありがたいですね!!
父が今後どうなるかはわかりませんが、とりあえず今回はうまくいった感があってよかったです!!