若者にとって「おもしろくない」社会を変える方法

社会の意思決定に若者の意見が反映されていないように感じる。
家賃の補助だって、出産祝い金の支給だって、結婚に係る費用の補助だってしてほしい!僕たち若者も困っているんだ!
そんな社会を変える方法を具体的に考えてみた。
※本記事では「若者」を20・30代を指す言葉として扱っています。

プロローグ:感動で、私たちは分断された

もともと、そんなに世の中に対して不満などがあるタイプではありませんでした。

どのような世の中にあったとしても、飄々と生きていく自信はありましたし、これといった困りごともありません。

ですがこの1年は、特にいろいろと考えることが多かったように感じています。

昨年の夏、「感動で、私たちは一つになる」をモットーに東京オリンピックが開催されました。

僕はその中継を銭湯のサウナ室に設置されたテレビで観ていました。

暑さを我慢して汗をダラダラと垂らしている周りのおじさんたちは、「ととのう」ことに頭がいっぱいで、中継映像を見る余裕がなさそうです。

僕自身も流れる映像を眺めるだけで、スポーツ観戦には元から関心がありません。

テレビの奥で興奮気味に実況するリポーターの大きな声ばかりが、世の中から浮いているように感じられました。

Youtubeで「東京オリンピック」と検索して、視聴率の高い順番に動画を並べてみると、再生回数が1,000万回を超えている動画はなんと3つしかありません。


1つ目は桑田佳祐さんの「SMILE〜晴れ渡る空のように〜」の映像で、2つ目は嵐の「カイト (アラフェス2020 at 国立競技場)」というライブ映像です。

上位2つが、オリンピックとは直接関係があるとは言い難い音楽関連の動画となっています。

そして3つ目は「ヒカキン & セイキンが東京オリンピックに出場www」でプレステ4のソフトをおもしろおかしくプレイする動画です。

多額の大会費用をかけるくらいなら、ヒカキンにおもしろおかしいことをしてもらった方が、国民の関心を惹けたのではないかとさえ思ってしまいます。

元々、大会開催費用は約7,300億と言われていたのに、最終的には3兆円近くまで膨らんだそうです。

都民の負担を考えると、1人当たり10万円以上と言われています。

正直なところ、オリンピックに10万円を払うくらいなら、馴染みの飲食店で日ごろの感謝を込めて、友人を招いたパーティーでもしたいくらいです。

僕の友人は、高円寺や中野で知り合った20代・30代が多いけれど、開催期間中も誰かとオリンピックの話題で盛り上がったことはありません。

結局、誰が何のために開催したのだろうと疑問は残ったままとなりました。

そんなモヤモヤをぼんやりと感じていた頃、ラジオからこんなニュースが聞こえてきました。

「札幌市、2030年冬季五輪招致」

正気を疑いました。

つい先日の東京オリンピックの問題すら解消されていないのに、また同じことをしようとしているなんて。

僕が、僕たちが社会から切り離されてしまったような気がしました。

自分や周囲の人達の考えがすべて正しいだなんて思ったことはありません。

それにしたって、これだけ真逆な発想の行動をされると、自分が同じ社会に属しているのだという実感すら遠のいてしまいます。

なにより、おもしろくない。

このできごとだけじゃなくて、この一年間「おもしろくない」と思うことが多くありました。

僕はいま、この「おもしろくない」という感情と、真剣に向き合う必要があるかもしれないと感じています。

若者が多いまちでも「おもしろくない」

この「おもしろくない」の正体は、社会の意思決定に、自分や周囲の人達の意見が反映されていないように感じてしまっていることだと思っています。

この国では、民主主義の名の下に選挙が行われていますが、若者の人口は少ないのだからそれはしょうがないことかもしれません。

実は、先日実施した「中野区在住の20代・30代に対する意識調査」で、区の取組に対する実感を問う質問を1つ設けていました。

この結果を見ると、若者自身があらゆる角度から自分たち若者に対する支援や取組といったものが充実していないと感じていることがわかります。

20代・30代の若者が人口構成比の3割を占めているこのまちならば、若者に対する支援や取組が充実していてもよいのになと思います。

結局、国全体の若者の割合が少ないという理由だけではなく、若者が多いまちであっても、若者の声というのは反映されづらい社会なのだと思います。

僕は一人の若者として、こういう状況を「おもしろくない」と思います。

※中野区は令和4年度から「若者会議」と呼ばれる取組を試行的に開始していますので、若者に向けた取組を推進しています。

[blogcard url=”https://nakakoto.online/boku/survey-3/”]

若者向けの取組や支援事例

国内には、実際に若者向けの取組や支援を様々に行っている自治体があります。

そして、ここで紹介する取組は、自分たちが住んでいるまちでも、若者が行動すれば実施することができるものばかりです。

例えば、岩手県一関市では、結婚をした夫婦に最高で60万円を結婚生活支援補助金として支給しています。東京での一人暮らしって貯金するのも一苦労なので、これがあれば同居生活の開始時にも非常に助かりますね!

北海道上ノ国町では、子供1人が生まれるたびに出生祝い金として50万円支給するとしています。これは国が行っている出産育児一時金(42万円)とは別に町として支給するものなので、実質子供が産まれると100万円程度経済的に助かることになります。

兵庫県養父市では、民間賃貸住宅入居奨励金として月額20,000円を限度に12か月分の家賃補助をしてくれます。

北海道三笠市では、若者移住定住促進家賃助成事業として、家賃の2分の1の額を「みかさ共通商品券」で助成してくれます。

なんだか、お金に関する事例ばかり紹介してしまいましたが、結局、自分たちは大事にしてもらえていると実感しやすいのはこうした内容だと思います。

全国のどこでも、こういう取組を一律に推進するべきだとは思っていません。

ただ、若者が多いまちならば、実態に合わせてこうした取組を積極的に進めた方が、 

【転入→定住→出産・子育て→シビックプライドの醸成】

といった好循環が発生していくだろうと感じます。

具体的な方法

天才学者成田悠輔は、こんな趣旨の発言をしていました。

・選挙のたびに若者の投票率の向上を目指したキャンペーンを行っているが、それで社会は変わらないと思う。

・なぜなら、若者の人口構成比がそもそも少ないこと、それと若者の自民党支持率が高いからだ。

・だったら、国を変えようとするよりも独立国として、例えば人口の少ない自治体とかを若者でのっとってしまえば。

この意見に対して、国という単位で考えたとき、成田悠輔の話は最もだと思っています。

でも、基礎自治体(市区町村)という単位であれば話は変わってくるとも感じます。

令和2年度の国勢調査では、20代・30代の人口構成比は全国1,718市町村の中で、豊島区が1番高く(33.9%)、次いで中野区(32.2%)、千代田区(30.6%)となっていました。(墨田区・新宿区も3割を超えている)

全国の平均が20.4%なので、これらの自治体は10ポイント程度、若者の構成比が全国よりも高いことになります。

こうした特徴を持つ自治体であれば、成田悠輔の指摘する「若者の人口構成比がそもそも少ない」という点はクリアすることができます。

実は僕が住んでいる中野区は、十分に若者が行動するだけで若者にとって「おもしろくない」社会を変えられるポテンシャルを秘めているまちなのです。

では実際、何人くらいがどのように行動すればよいかを考えてみます。

ご存じ、地方自治体は二元代表制です。

住民が首長と議会議員をそれぞれ選び、車の両輪となって様々にものごとを決定していきます。

予算の提案や行政の執行権は首長にあり、それを監視したり、予算を審議するのが議会議員の役目です。

そして、ものごとを決める際には議会議員の過半数の賛成が必要となります。

中野区でいうと、議会議員定数は42名となっていますので、若者が1人や2人いたところで大きな影響力は持てません。

過半数(22人)いてこそという感じがありますね。

ちなみに、令和元年度の統一地方選挙で中野区議会議員となった42人の合計得票数は約93,000票でした。

中野区内の20代・30代はおおむね11万人だから、このうち85%の人が投票すれば、若者が投票した候補者だけで全議席を抑えることができます。

さすがに現実的ではありませんね。。。

ところが、過半数の22席でよければ、合計得票数は約40,000票です。

なんと、区内の20代・30代の36%の人が投票すれば、過半数に相当する候補者を議会に送ることが可能となります。

この結果、提案や議論によって若者目線のまちづくりにつなげていくことが可能となります。

過半数を若者で抑えて意見を通すというのは、わかりやすい極論です。
あるべき論で言えば、人口構成比にならって42人のうちの3割くらいは若者になった方が適切だろうとは思っています!

まとめ

ここまでをまとめると、

①若者にとって「おもしろくない」社会はまち単位であれば変えられる

②若者の人口構成比が多いまちは、「おもしろくない」社会を変えられる可能性が高い

③中野区を例にするなら、22名以上の同じような志を持った区議会議員立候補と、20代・30代のうちの36%くらいの方々の投票が必要

こういうことになります。

なんだか、3行で書いてしまうと結構簡単に叶う気がしてしまいます。

(そのためにも、本職と兼業で区議会議員を務められるよう、夜間や休日議会の開催など、環境準備として求められることは別途あると思っています。また、大勢の若者が立候補してもよいと思えるよう、立候補の心的ハードルを下げることも求められます。)

僕は30歳になりました。

いわゆる若者と社会的にくくられているのは、あと10年間です。

今日ここに書いた内容でも、まったく違う内容でもいいので、何かしらの形で、若者にとって「おもしろくない」社会と向き合っていきたいなと思いはじめたのかもしれない。(わからん)